会長挨拶
椎名 秀一朗
順天堂大学大学院医学研究科 消化器画像診断・治療学 教授
第1回日本アブレーション研究会を2023年2月4日(土曜日)、東京大学伊藤国際学術研究センター(東京大学本郷キャンパス内)にて開催いたします。
アブレーションとは超音波やCT、MRIガイド下に針状のアプリケーターなどを腫瘍内に挿入し熱で腫瘍を死滅させる治療などの総称であり、ラジオ波治療やマイクロ波治療が代表的なアブレーションです。
肝癌の領域で外科と競い合い進歩してきたアブレーションですが、昨年には、SURF trialの結果が発表され、肝切除とラジオ波治療の比較では、全生存率でも無再発生存率でも肝切除の優位性は認められませんでした。SURF trial は全国49の施設が2009年から6年間にわたり、肝機能良好で3cm以下、3個以下の初発肝細胞癌患者を登録し、その後5年間経過を観察したランダム化比較試験です。SURF trialなどの比較試験の結果、昨年に改訂された肝癌診療ガイドラインでは3cm以下、3個以下の症例では肝切除とアブレーションとは同等の扱いとなりました。
現在、小径腎細胞癌に対する凍結療法や副腎腫瘍に対するラジオ波治療も保険適用となっています。また、肺腫瘍や腎腫瘍、骨軟部腫瘍などに対するラジオ波治療も本年9月に保険適用となります。さらに、甲状腺アブレーションも海外では広く行われ、乳癌などの領域でもアブレーションは広まるものと思われます。アブレーションについては研究会HPに詳しく記載されています。http://ablation-jp.org/をご覧ください。
日本アブレーション研究会は、2022年1月にすべての種類のアブレーションが安全かつ効果的に実施されるよう、会員相互ならびに関連機関との連携を図ることを目的として設立されました。第1回大会は、アブレーションに関わる全ての領域の医師、コメディカル、企業が集い、アブレーションに関する知識と経験、展望を共有し、アブレーションの新たなステージへと世界をリードしていく場にしたいと考えています。
同様の学会は、アジアでは Asian Conference on Tumor Ablation (ACTA)、台湾にはTaiwan Academy of Tumor Ablation (TATA)、韓国にはKorean Society of Image-guided Tumor Ablation (KSITA) があり、本大会では韓国や台湾との合同シンポジウムも企画しています。
ぜひ多くの方々にご参加いただき、熱い議論を展開していただければ幸いです。